福姫の話


柴犬、福姫が我が家の一員になったのは、私がこの街へ越してきて2ヶ月目のころでした。
庭付きの家に越してきたことが嬉しくて、毎日、一日中、庭で過ごしていたところ、ワンちゃんの散歩で朝夕庭先を通るおじさんと会話するようになりました。
そしてある日、おじさんに「柴犬いるかい?」と尋ねられました。私は「欲しいです!」と即答。
すぐに、福姫が生まれたお宅に連れて行って、紹介していただきました。
そのお宅で、生まれたて(1か月)の赤柴が3匹、黒柴が2匹、白柴が1匹、叫びたくなるほどの可愛い赤ちゃんたち6匹が出迎えてくれました。柴犬に、黒や白がいるのを初めて知りました。
そのお宅の方は、その日初めて、子犬達をお庭の芝生の上に出して遊ばせてくれました。同じお母さんから生まれたのにもかかわらず、元気すぎる子、マイペースな子、慎重な子、それぞれ性格が違うようでした。
どの子にしようか、選ぶことのできないほど、みんな可愛らしくて迷っていると、当時小学生の娘が、「この子にする」と決めたのが福姫だったのです。福姫は6匹の中で一番小さくて臆病で、初めての芝生の感触にすっかり怯えきって、遊びもせずにぶるぶる震え、しまいにはおなかを下してしまいました。
正直、私はこんなに臆病で体の弱い子は良くないんじゃないかと、娘に言いましたが、娘は頑として聞かず、その子をもらって帰ることになりました。
そして、福姫は今日までの6年間、大きな病気一つせず、元気に育ってくれました。家族を守るという気持ちがとても強くて、我慢強く、物覚えが良く、本当に良い子です。