ビロードモウズイカ

この堂々たる威風を放つ植物は、ビロードモウズイカ(ビロード毛蕊花ゴマノハグサ科)です。[:large:left]
地中海沿岸が原産で、明治時代に園芸用、薬用に入ってきましたが、今では野生化して、開けた空き地などで全国で見ることができます。

かく言う我が家のこの子も、我が家の前の土地がまだ宅地用に造成されただけの空き地だったころ、ある年突然ニョキニョキと生えてきたものなのです。
そこで小さ目の株を掘り取って、我が家の庭にご招待してみましたが、1年で枯れてしまい、その後姿を見ることはなく、向かいの空き地にもずらっと家が建って、よそでその姿を見ることもなくなりました。
ところが、一昨年、我が家を建て替えたとき、基礎を造るときに山砂をたくさん用いりますと、乾燥した砂質の土壌が好きなビロードモウズイカが、建物の際に芽を出し始めたのです。

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どこから種が飛んできたのか、まるで並べて植えたように仲良く並んで大きくなりました。
彼らがここを気に入り、勝手に選んで生えてきたのです。


私の背丈160cmを優に超えています。
まるで人間がそこにいるような存在感です。
写真では花穂の先が首を傾げたようになっていますが、よく晴れた日にはピンと上を向いています。
決して先が柔らかくてしなっているわけではなく、彼らの意思を以って、首をかしげているわけです。
他にもこういう植物はありますが、何しろこの大きさのものですから、思慮深く何かを見抜く力を持つ人がそこにいる、と思わせるほどの不思議感があります。
私には、美しい袴を付け、笏を持った宮司さんのように見えます。


こんな大きさのものが3つも生えていると、道行く人もギョッとするようで、よく尋ねられます。
ビロードモウズイカという名前を教えると、「イカ!?イカなの!?」などと驚く方もいらっしゃいました…
近年、イングリッシュガーデン向けに「バーバスカム」という名で売られている植物と、基本は一緒です。
「バーバスカム」という名も、ラテン語で「ひげ」を意味するそうです。
やわらかい毛が密に生えている大きな葉っぱは、手触りがとても良くて、しかも分厚くしっかりとしています。
我が家の秋田犬の耳の触り心地と似ています。


幾重にも重なる大きな葉っぱの下には、雨が降っても水はそうそう入っていきません。
乾燥が好きなのですね〜。
私も彼らには水も肥料も与えません。
一番下の葉は、枯れて朽ちていきますが、神経質に取り除く必要もありません。
やがてダンゴムシなどの、庭のお掃除屋さんたちが、跡も残さずきれいにしてくれます。
ビロードモウズイカの葉の下の土は、いつもほんとにキレーです。
大きな葉影の下は、真夏でも虫君たちのオアシスとなることでしょう。