コチドリの話

昨日、福姫、幸姫を連れて散歩をしていると、コチドリを見かけました。今年もここへやってきたのね、と感慨深く思いました。

私が住むこの一帯は、以前はすり鉢状の65haもの自然豊かな深い森で、そこを市のバックアップのもと、地権者とURが大規模開発しました。すり鉢の底にあたる部分には川が流れており、昔はウナギなども子供が簡単に捕まえられたそうです。

私がこちらへ移ってきた6年前は、まだ街は完全に出来上がっておらず、半分以上はまだ造成中の状態でした。空き地ではキジが雛を連れて歩き、野兎のフンがあちこちに見られ、野ネズミを狙うノスリホバリングなども見ることができました。冬になるとコミミズクが駅のそばにわずかばかり残された森のかけらにやってきて、通勤帰りの人々を癒すようにホーホーと鳴いていたのでした。

しかし、そのような情景も3年たつと、一切見られなくなりました。わずかに残っていた森の木々も次々切られて行きました。


コチドリは、砂利の多い地面に巣を作ります。
私が最初に見たコチドリは、開発地の分譲案内所用の駐車場跡で営巣していました。砂利を敷いた駐車場は、コチドリの巣作りにおあつらえ向きだったのでしょう。ホワホワの羽の片手に入るほどの小さな雛を連れて歩く姿をよく見かけました。気付かずそばを通ると、親が私の気を引こうと怪我をしたふりをしてヨタヨタと近寄ってきます。その間、ひな鳥たちは砂利の間にじっとうずくまり、石のふりをしています。その様子は、愛にあふれ、かわいらしく、胸を打ちます。
しかし、開発地ではそれがあだとなることもあります。車道を雛を連れて渡ろうとしているコチドリを何度か見かけることがありました。コチドリはたいてい、朝早い時間に移動するのですが、土砂を運ぶ大型ダンプも早朝にやってきます。コチドリが道を渡ろうとしているところにダンプがやって来て、危険を感じたひな鳥はその場にうずくまり………その小さな亡骸を、私は何度目にしたことでしょう!!

それでも今年も、コチドリはその駐車場跡にやってきました。いつも道を渡って移動していた向かいの空き地も、今は家が建ち始めました。車の通行量も年々多くなってきています。どうか、無事に子供たちを育て上げ、次の命をつないでおくれ。かよわき命たちをお守りくださるように、神様に祈らずには居られません。

デュシェス・ド・ブラバンの手前に咲くシラー・カンパニュラ